1Q84

提供: #もの書きWiki
ナビゲーションに移動 検索に移動

1Q84 ichi-kew-hachi-yon

村上春樹

2009年から、書き下ろし刊行が開始された著者の長編小説。BOOK1BOOK2の2冊が、新潮社から同時刊行。2010年には、BOOK3が刊行された。
書名の読み(英字表記)は、<ichi-kew-hachi-yon>(単行本の大扉に依る)。

BOOK1、BOOK2を通じて、奇数章と偶数章で、それぞれ別の物語が描かれ、章番号順に(つまり交互に)配列されていく。
(この形式は、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』以降、著者が長編小説で何度も採用してきたもの)

BOOK1、BOOK2の奇数章では、女殺し屋の青豆が、ある暗殺を決行した後しばらくして、自分が歴史の細部が異なった日本に紛れ込んだことに気付き、作中世界を私秘的に「1Q84」と仮称していく。彼女はやがて専属的な依頼主(柳屋敷の女主人)から、あるカルト集団リーダーの暗殺を要請されることになる。

偶数章では、小説家の玉子である予備校講師、天吾が、ふかえり(深田絵里子)という少女が語った物語『空気さなぎ』に魅せられる。天吾は、文芸誌の新人賞に応募された原稿のリライトという、秘密を要するプランへの協力を、編集者の小松から要請され、躊躇いはあったが協力していく。

BOOK3では、BOOK1、BOOK2で語られた「青豆」と「天吾」2筋の物語に、3筋めの物語「牛河」が加わり、綾なしを複雑にしていく。

長編作品としては、2004年に書き下ろし刊行された『アフターダーク』以来の作品だが、長編作品は4、5年に1度のペースで公刊してきている著者としては順当なペース。

続巻の可能性
BOOK3刊行直後の2010年7月、新潮社発行の季刊「考える人」(No.33)に掲載されたロングインタビューで、村上春樹は、『1Q84』の続刊予定について、完全に保留する発言をしている。
要約すると、『1Q84』の続編を書くかどうかは、いまの段階では作者にもわからない、「三年間ずっとこの小説を書いてきて、いまはすっからかんの状態だから」と言い。同時に、ただ、いまの段階でいえるのは、あの前にも物語はあるし、あのあとにも物語はあるということです。その物語は僕の中に漠然とではあるけれど受胎されています。つまり続編を書く可能性はまったくないとは言えないということです」とも言っている。
参照記事:

用語や登場人物

用語や人名
解説
IQ84
奇数章の女性キャラ青豆が、自分の記憶と細部で異なる作中世界の歴史に気づき、BOOK1第9章で個人的に密かに仮称するのが「1Q84」(“Qはquestion markのQだ。疑問符を背負ったもの”)。
  • 仮に、『1Q84』についての事前情報を一切知らない読者が、書籍を手にした場合、タイトルから何を連想するだろう。「1984」を連想するかもしれないし、あるいは海外小説に詳しければ、ジョージ・オーウェルの『1984年』を連想するかもしれない。もし、そうした連想が働かなければ、「1Q84」のタイトルが示唆するものは、謎めいて曖昧なイメージにしかならないのではないか?(例えば「IQ84」と誤読していたというコメントも、ネットでは見られた)。「1Q84」が意味する事柄が何か、作中読者に明示されるのは、BOOK1第9章でのことになる。
    ただ、書籍のタイトル文字や、目次、章題などで、反復使用されるデザイン化された“Q”の文字は、印象が強い。このQ文字から、Questionの“Q”を連想する人は、意外に少なくない、と思われる。
  • 「1Q84は、1984年の日本のパラレル・ワールド」に近い。ただし、作中、主要人物の口から「1Q84は、SF小説的な並行宇宙ではない(もはや本来の1984年はどこにもない)」旨が語られる(BOOK2)。仮に、1Q84を「パラレルワールド」と呼ぶにしても、フィリップ・K・ディックの『高い城の男』で描かれたような、幻想的な架空世界、架空歴史の方に類縁のはず。ハードSF的な並行世界としては描かれていない。
エピグラフ
BOOK1巻頭では、ポピュラーソング「イッツ・オンリー・ア・ペーパームーン(It's Only a Paper Moon)」(E. Y. Harburg and Billy Rose)の歌詞から、一部がエピグラフとして引用されている。BOOK2巻頭には、エピグラフは見当たらない。BOOK1巻頭のものが、BOOK1〜BOOK2全体の内容に対応している、とみて構わないのかもしれない。
作中「イッツ・オンリー・ア・ペーパームーン」への言及は、BOOK1第5章と、BOOK2第13章、それぞれの本文中にある。
青豆
BOOK1、BOOK2、共に奇数章で語られる物語の主役級女性キャラ。「青豆」は名字で、名前は作中明かされない。BOOK1の第3章で、青豆が暗殺者であることが描かれる。職業は“都内でも有数の高級なスポーツ・クラブ”に勤務するインストラクター。
天吾(川奈天吾)
BOOK1、BOOK2、共に偶数章で語られる物語の主役級男性キャラ。29歳。予備校で数学講師を勤めながら小説を書いている(職業的作家になることを求めているかどうか、導入部では本人にもよくわからずにいる)。第2章で、下読みをした文芸誌の新人賞応募作の内『空気さなぎ』を候補作に残すよう、懇意にしている編集者の小松祐二に進言。逆に、小松から秘密裏に『空気さなぎ』をリライトするプランに協力するよう持ちかけられる。
天吾は、「理性も常識も本能も、こんなことからは一刻も早く手を引いた方がいいと訴えて」いるにも関わらず、物語の魅力に惹かれ、ふかえり(深田絵里子)の了承を得て応募作原稿の文章を整えることになる。
『空気さなぎ』
ふかえり(深田絵里子)名義で文芸誌の新人文芸賞に応募されてきた物語。作中に盛り込まれる最初の物語内物語になる。ただし、物語の概略が語られるヵ所はあっても、直接作品テクストが記されるヵ所は例外的に、極、少ない分量がみられる程度。物語内物語は、概ね、リライト作業をする天吾の意識を通して描写される。
(あるいは、BOOK2のある章ではかなりまとまって描かれるが、やはり物語内で刊行された単行本を読む作中人物の意識越しに語られる)
編集者の小松は、『空気さなぎ』には、何か特別なものがあるものの、文章がなっていないうえ、作者には、文章に対する興味が無い、と評す。
「空気さなぎ」とは、物語に登場する不気味な雰囲気の小人たち(リトル・ピープル)が望むと、空中から紡ぎだされる繭のこと。天吾は、さなぎと繭の混同には当初から気付いているが、「空気さなぎ」という言葉の雰囲気がいい、と評価している。
応募された『空気さなぎ』の原稿は、実はふかえりが口述した物語を、同居している別の少女(戎野アザミ)がワープロ文書化したものだった。この件は、BOOK1第8章で語られる。
やがて天吾のリライトしたふかえり名義の『空気さなぎ』は、新人賞を受賞し、ベストセラーになる。その頃、天吾は、リライトの経験をきっかけに、新たな創作の源泉を得た感覚を覚え、自作小説の執筆にかかっていく。
小松祐二
BOOK1第2章から、偶数章に登場する男性キャラ。新人賞に応募された『空気さなぎ』を秘密裏にリライトするよう天吾を仕向ける。
45歳で文芸誌の編集一筋でやってきた。物語内の今(1984年/IQ84年)から5年ほど前、天吾が新人賞に応募し最終選考に残った作品に注目。天吾のやる気と素質を評価し、細かな仕事を回すなど、懇意にしてきていた。
ふかえり(深田絵里子)
BOOK1第4章から偶数章に登場する女性キャラ。17歳高校生。名前は、第2章から天吾と小松の会話で話題にのぼる。登場時は、極端に短いセンテンスで、一風変わった話し方しかしないエキセントリックさが印象づけられる。(天吾は、当初、彼女との会話を“手旗信号で話しているみたいだ”と思う)
ふかえりが、一種の読字障害(ディスクレシア)で、文字を読むこと、書くことが大変困難であることは、BOOK1第8章で明かされる。
リトル・ピープル
『空気さなぎ』の物語に登場する、小人のような存在。BOOK1第4章にて、天吾がふかえりとの会話で話題にするのが、作中初めての言及。このヵ所でふかえりは、「リトル・ピープルはほんとうにいる」と天吾に語る。
BOOK1第17章末尾で、麻布のセーフハウスに保護されていた10歳の少女、つばさが「リトル・ピープル」という言葉を口にする。これは奇数章で初めての言及になる。BOOK1第19章では、物語内の現実(麻布のセーフハウス)に姿を現すリトル・ピープルの様子が、はじめて描かれる。
柳屋敷の女主人(老婦人)
BOOK1の第7章で初登場する奇数章の女性キャラ。麻布にある古い洋風邸宅で暮らしている。BOOK1第7章では、彼女が青豆に暗殺を依頼していることが遠まわしに描かれる。“都内でも有数の高級なスポーツ・クラブ”の会員で、同クラブにインストラクターとして勤務していた青豆と知り合った過去の経緯は、BOOK1第11章で記される。
老婦人が、DV被害者の女性用の私営セーフハウスを営んでいることは、BOOK1第17章で描かれる。同じ章では、彼女の実の娘もかつて、反復されたDVに絶望し自殺したことが回想的に描かれる。
あけぼの
作中世界の1981年に、警察及び自衛隊と銃撃戦を展開し、壊滅したとされる、架空の政治的武装過激派集団。作中世界では、このあけぼの壊滅事件をきっかけに、1982年から警察官の通常装備にセミ・オート拳銃(ベレッタのモデル92)が採用された。
先生(戎野隆之)
物語内の今、時点での、ふかえりの事実上の保護者。BOOK1の第10章で初登場する偶数章のキャラクター。かつては、文化人類学の研究者だったが、学者生活から身を引いて久しい。
BOOK1第10章で天吾と初めて会った先生(戎野)は、天吾の口から、天吾自身のこと小松のこと『空気さなぎ』リライトのプランのことを聞き、ふかえりが天吾を信用しているらしい、との理由も挙げ、リライトプランを承認する。
BOOK1第16章で、天吾は小松の口から、大学退職後の戎野が、投資コンサルタントとして成功していと教えられる。同じやりとりで、ふかえりの事務所的なペーパー・カンパニーが設立され、先生が、代表を引き受けることも聞かされ、天吾は先生の意図をいぶかしむ。
BOOK1第18章では、ふかえりを伴った先生と天吾が会う。この時、天吾は先生にふかえりの事務所代表を引き受ける真意を質問。先生は、マスコミを誘導し、「さきがけ」に揺さぶりをかけ、内部で消息が知れなくなっているふかえりの両親の情報を得るのが狙い、と遠まわしに認める。
深田保
ふかえりの父親。戎野隆之(先生)よりも10歳ばかり年下で、1960年代には、戎野と同じ大学同じ学部で「教えていた」(教授だったのか助教授だったのかは定かでない)。
新左翼セクトの指導者だった深田保は、戎野の退職から2年後には大学を離れ、セクト組織から追随した学生活動家たちと共にタカシマ塾に加入。さらに2年後、タカシマ塾を離れ、自分たちの農業コミューン「さきがけ」を発足させた。深田らのタカシマ塾加入は、ノウハウを習得するためだったとは戎野の談(BOOK1第10章)。
BOOK1第12章で、戎野が天吾に語るところによれば、深田保とその妻(ふかえりの母)が属しているはずの「さきがけ」外部からは、深田夫妻の安否が数年間、確認できなくなっている。戎野は拘禁されている可能性も考え、警察にもかけあったが、捜査には至らなかった。
タカシマ塾
全国的な規模の有機農法農業コミューン。BOOK1第10章にて、先生(戎野隆之)が天吾に語るふかえりの境遇の内で、言及される。
深田保が、妻や娘(ふかえり)、毛沢東主義の学生活動家たちと共に2年ほど身を投じた。「タカシマ塾」は、後に深田保が立ち上げた「さきがけ」と異なり、共産的体制のコミューンだったと、設定されている。
先生(戎野)によれば「タカシマのやっていることは、私に言わせればだが、何も考えないロボットを作り出すことだ。人の頭から、自分でものを考える回線を取り外してしまう。ジョージ・オーウェルが小説に書いたのと同じような世界だよ」とのこと。
作中の「タカシマ塾」は、おそらく、「山岸会」がイメージ・ソースにされた、架空の集団と思われる。
『1Q84』の内容を巡る議論の内には、「タカシマ塾のモデルは山岸会」とみなした意見も聞かれるが、フィクションの読解では、作中で描かれるタカシマ塾、さきがけ、あけぼのの性格の違い、の吟味などをモデルの詮索より優先させて考えていった方がいいだろう。
さきがけ
深田保が、タカシマ塾から離脱後に立ち上げた農業コミューン。後に「あけぼの」が分離離脱した。BOOK1第10章にて、先生(戎野隆之)が天吾に語るふかえりの境遇の内で、言及される。
作中の1981年、「あけぼの」が壊滅する銃撃戦が起きた年には、すでに「さきがけ」は宗教法人に変貌していた。宗教法人の認可を得たのは、作中の1979年のこと、とされている。
BOOK1第10章で先生(戎野)が語るところでは、「さきがけ」では、当初、タカシマ塾のような原始共産制は採られず、私有財産も限定せず、全体の収益を収入として分配することもされた。コミューンは、共同生活を送るユニット複数から構成され、ユニット間の緩やかな連帯が企図され、メンバーはユニット間の移籍も自由だった。しかし、この緩いユニット制が原因になり、「さきがけ」の内部が、政治的な急進派とユートピア主義的な派とに分裂していくことが不可避だった、とも先生は語る。
証人会
作中に設定されている架空のキリスト教系新興宗教団体。原理主義的で、明らかにエホバの証人が、イメージ・ソースにされている、と思われる。
BOOK1第12章で、戎野邸からアパートの自室に戻る途中の天吾は、中央線の車内で印象的な母娘を目撃。それがきっかけになって、小学校時代の同級生で、証人会の信徒だった少女のことを思い出し回想する。この章の天吾の回想で、奇数章で時折青豆が口にする「お祈り」が証人会のものだろう、と察せられる。
BOOK1第19章では、青豆と柳屋敷の女主人の会話で、幼い頃の青豆が両親と共に証人会の信仰生活を守っていたこと。10歳の時に、反発して、家を出て親戚に身を寄せ、信仰を捨てたことが確定的に描かれる。
『1Q84』の「証人会」を思わせる架空の宗教団体は、『1Q84』に先立つ村上春樹の短編、『神の子供たちはみな踊る』(同名の短編集に採録された表題作)でも扱われている。
二つの月(二つめの月)
ふかえりによる『空気さなぎ』の物語内で、「リトル・ピープルが空気さなぎを作り上げたとき、月が二つになる」。主人公の少女が空を見上げると、月が二つ浮かんでいる様子がみえる。
BOOK1第14章で、小松は天吾がいったん引き渡したリライト原稿について、二つの月の描写を詳細化するよう指示。天吾も指示を受け入れる。
BOOK1第15章の終盤、青豆は自室から見上げる夜空に、2つの月が並んでいる光景に気付く。
“空には月が二つ浮かんでいた。小さな月と、大きな月。それが並んで空に浮かんでいる。大きな方がいつもの見慣れた月だ。満月に近く、黄色い。しかしその隣にもうひとつ、別の月があった。見慣れない形の月だ。いくぶんいびつで、色もうっすら苔が生えたみたいに緑がかっている。それが彼女の視野の捉えたものだった。”
天吾は、『空気さなぎ』のリライト原稿を小松に引き渡したあと、自作の小説に取り組む。それが『空気さなぎ』に触発された「二つの月がある世界」の物語であることは、BOOK1の終盤で明かされる。
麻布のセーフハウス
DV被害者の女性を保護するためのセーフハウス。麻布の柳屋敷の敷地に隣接した土地で営まれている。柳屋敷の女主人が、その資産を使って運営。
BOOK1第17章で、青豆と女主人の会話の話題に上るが、会話の様子から青豆は以前からセーフハウスの存在を知っていた、と思われる(BOOK1第7章にある青豆とタマルの会話も傍証になる)。第17章の終盤、老婦人に伴われた青豆は、セーフハウスを訪問。ハウスに保護されている10歳の少女、つばさと引き合わされる。この訪問の描写から、青豆がセーフハウスの敷地に立ち入るのは初めてのこと、と思われる。
つばさ
BOOK1第17章で、奇数章の物語に登場する10歳の少女。麻布の柳屋敷に隣接しているセーフハウスに、相談所から「6週間前」に送られてきた。性的暴行の被害者で、17章の物語内の今でも、ほとんど口をきかない。
BOOK1第17章の末尾で、青豆と柳屋敷の女主人の会話を横で聞いていたつばさは「リトル・ピープル」という言葉を差し挟む。これは奇数章での「リトル・ピープル」初めての言及になる。

メモ

『1Q84』は、どんな話か
  • 『1Q84』は容易に要約し難い作品になっている。語り口は平易だが、構成が複雑だし隠喩的表現が多彩だからだ。おそらく、新潮社刊の単行本で、腰帯に刷り込まれたコピーは、内容について有力な示唆になっているだろう。
    BOOK1腰帯「『こうであったかもしれない』過去が、その暗い鏡に浮かび上がらせるのは、『そうではなかったかもしれない』現在の姿だ。」
    BOOK2腰帯「心から一歩も外に出ないものごとは、この世界にはない。心から外に出ないものごとは、そこに別の世界を作り上げていく。」
麻布のセーフハウス
  • BOOK1第17章の末尾から、奇数章で描写される「麻布のセーフハウス」は、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』以降、村上春樹の長編作品で繰り返し描かれている「静謐な生活の空間」のヴァリアントと思える。
    だとすれば、「ある種の狂気の中にいる」老婦人(BOOK1第17章)によって維持運営去れているセーフハウスの含意は、「静謐な生活の空間」の新しい相を描出していると言えるだろう。
『1Q84』と『ねじまき鳥クロニクル
  • 『1Q84』の作中世界は、「歴史の細部が異なった1984年(1Q84)の日本」だが、村上春樹の長編『ねじまき鳥クロニクル』(刊行、1992年〜1995年)の背景は、「1984年の日本」になっている。
『1Q84』と短編小説『神の子どもたちはみな踊る
  • 村上春樹の短編『神の子どもたちはみな踊る』(1999年、後、同題作品集の表題作に)では、『1Q84』の一部と、近縁な題材、事項が描かれている。
    • 『1Q84』で描かれる「証人会」を思わせる架空の宗教教団が、描かれている。
    • 『1Q84』の主要男性キャラ天吾は、自分の母親がどうなったかに疑問を持つ人物で、間接的に「自分の本当の父親が誰か」に疑問を抱いている。作中の過去、父親に、母は天吾を生んですぐ病死したと言われたが信じていない。物語内の今で、父親に「あんたの母親は空白と交わってあんたを生んだ」と言われるヵ所がある。
    • 短編『神の子どもたちはみな踊る』の主人公、善也は、「自分の父親が誰かに疑問を持つ」人物。作中の過去、母親に、お父さんは『お方』(彼らは自分たちの神をそういう名で呼んだ)だ、と言われたが信じていない。作中、善也は、自分の父親に違いないと直感する男を追うが、見失い“僕がそれを目にすることはもう二度とあるまい”と、思う。
『1Q84』と『1984年

村上(以下M) G・オーウェルの未来小説『1984』を土台に、近い過去を小説にしたいと以前から思っていた。もう一つ、オウム真理教事件がある。僕は地下鉄サリン事件の被害者60人以上から話を聞いて『アンダーグラウンド』にまとめ、続いてオウムの信者8人に聞いた話を『約束された場所で』に書いた。

  • 『1Q84』と『1984年』の関係は、世上聞かれるほどストレートではない。
    作中、作中人物による『1984年』への言及はあるが、作中の1Q84年の日本では「ビッグ・ブラザーの出番はもはや無い」的に言われている。
    BOOK1第18章の章題も「もうビッグ・ブラザーの出てくる幕はない」になっている。
    ポイントは、少なくとも2点あるはずだ。まず「『1984』を土台に」、と言う場合、「村上の作家性をフィルターにして『1984』の何が土台にされたのか」というポイント。次に「土台に、近い過去を小説にした」とされる『1Q84』の内、「どの部分が土台で、どの部分が『近い過去を小説にした』ものか」というポイント。もちろん、作品を読む読者の方からは、「土台」にあたる要素と、「近い過去を小説にした」小説を成り立たせている要素とは、まず、入り混じっている形で読めるはずだ。

書誌情報

新潮社

関連書籍

話題まとめ

チャットログ

http://www.cre.ne.jp/writing/IRC/write-ex1/2009/06/20090609.html#190000
「1Q84」がミリオンセラー達成
http://www.cre.ne.jp/writing/IRC/write/2009/06/20090622.html
1週間くらいかけて読むつもりだったのですが。面白いので、つい一気読み。
http://www.cre.ne.jp/writing/IRC/write/2010/02/20100205.html#160000
1Q84 BOOK3、刊行日決定。後、新潮社が「あなたの『Q』の世界」を公募。
http://www.cre.ne.jp/writing/IRC/write/2010/04/20100427.html#230000
1Q84読み終わりです。らぶらぶだなあ。
http://www.cre.ne.jp/writing/IRC/write/2010/04/20100428.html#080000
BOOK1〜BOOK3を通して読んで、どうも内容面のバランスが良くない気がする。作者に意図はあったんだろうけれど、裏目に出てるのでは??
http://www.cre.ne.jp/writing/IRC/write-ex2/2010/04/20100428.html#090000
(BOOK1〜BOOK3で完結とすると)例えば、こんなとこが、気になる。
http://www.cre.ne.jp/writing/IRC/write-ex1/2010/04/20100429.html#060000
『IQ84』はBOOK4が出て完結するのではないだろうか??
http://www.cre.ne.jp/writing/IRC/write/2010/05/20100507.html#110004
『IQ84』をとことん楽しむには、行間を読んでいくのがいいと思う。
http://www.cre.ne.jp/writing/IRC/write/2010/05/20100513.html#100000
『IQ84』はBOOK3で完結しているか、していないか。

書評

blog記事

ソーシャルブックマークscuttle.cre.jp - 1Q84新着

テンプレート:rss show(http://scuttle.cre.jp/rss/all/1q84)

資料リンク

リンク

TrackBack

テンプレート:trackback