言語のレシピ

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言語のレシピ 多様性にひそむ普遍性をもとめて ( The Atoms of Language )

似た所など何一つなさそうな言語同士も、実は言語を作るレシピのただ一ケ所が違うだけかもしれない。言語学はあらゆる言語の多様性の本質に迫りつつある。謎解きの面白さ、言語学の醍醐味に満ちた一冊。

現存する言語の構造が、なぜそのように決まっているのか。また例外と見られるものがどのようなパラメータの変化で出てくるのか。というあたりの生成文法とパラメータの研究成果を、研究者が一般向けに解説した啓蒙書。

感想

  • 動詞にたくさん接頭辞がついて意味が深まる構造を始めとしたナヴァホ語の構造は面白いなあ。とか。主語を省略できるかというパラメータがあり、ラテン語(とかイタリア語やスペイン語)では省略できたのが、フランス語と英語は主語を必ず必要とするようにパラメータのスイッチが変化した、それにより複数の文法的特徴が規定されている、という話とか興味深いものです。
  • SVOの典型としては英語、SOVの典型としては日本語、多総合的言語(動詞に目的語や主語を結合させて単語にする言語)の典型としてはモホーク語あたりがあがってますね。パラメータの概念は実にたくさんの言語を統一的に理解できる興味深い理論的道具だと思いました。
  • 時制そのものの起源については書かれていませんでしたが、現在・過去・未来の時制の区別を持たず、時制の助動詞も持たず、かわりに副詞で補足表現するような言語もあるそうです。動詞に時制標識を持たない言語では動詞を連続させる構文があるとか、そんな話がありました。
  • 日本語やバスク語のような主要部後続型言語(句を作りまとめる単語が句の最後にくる言語)では格標識を用いることが一般的だそうです。

書籍情報

岩波現代文庫

言語のレシピ 多様性にひそむ普遍性をもとめて 単行本

原著 The Atoms of Language

話題まとめ

http://www.cre.ne.jp/writing/IRC/write/2004/02/20040202.html#220000
日経サイエンスに書評があった。最新の研究が入っているそーな。「パラメータを手掛かりにすると、未発見の言語を予測できるのみならず、文法特性の可能な組み合わせのうち決して実現しないパターンも言い当てられるという。」と読売の書評にも。
http://www.cre.ne.jp/writing/IRC/write/2004/10/20041006.html#120000
テンスやアスペクトは文法上の要素の配置の自由度とも関係してるらしい。面白いけど、原子と化学の比喩(原題は THE ATOM OF LANGUAGE )は混乱するかも知れません。
http://www.cre.ne.jp/writing/IRC/write/2004/11/20041118.html
中国語の場合には語の文中の位置が、語が主語かなどを決めますが、日本語の場合には 語+助詞 で表現します。そのため構造からして 語+助詞 による修飾語は、修飾される語の前に来るのが自然になります。そのほうが理解しやすいし、修飾語と被修飾語を区別しやすくなるからです。パラメータが構造を規定する例。

資料リンク

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