地獄少女(アニメ版)

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地獄少女

原作
地獄少女プロジェクト(原案=わたなべ ひろし
製作
地獄少女プロジェクト
(アニメーション製作はスタジオディーン
監督(総監督)
大森貴弘
シリーズ構成
金巻兼一
キャラクターデザイン
岡真里子
コピーライト
地獄少女プロジェクト、スカパー・ウェルシンクアニプレックス

アニメ版の『地獄少女』は、2005年から2009年にかけて断続的に3期、製作リリースされたアニメ版「地獄少女」シリーズの第1期タイトル。
(アニメシリーズを総称したり、マルチメディア展開された作品群を総称したりして「地獄少女」と言われることもある)

30分枠(各話、概ね25分ほど)。全26話

地上波では、東京で東京MXテレビが、近畿広域圏で毎日放送(MBS)が深夜枠で放映。
CSではANIMAXと、KIDS STATIONが、日本全域に放映。こちらは、深夜枠と夜の7時〜9時台などが織り交ぜられ、リラン(再放映)では、昼の時間帯で放映されたこともある。

第1期アニメの最も早い放映期間は、2005年10月〜2006年4月。

概略

深夜0時にだけ、アクセスできるサイト「地獄通信」。アクセスした者は、恨む相手の名前を書き込むと、恨みを晴らしてもらえる、という。

都市伝説として噂になっていた地獄通信に、実際にアクセスしてしまう者の前には、地獄少女と呼ばれる少女が現われる。地獄少女は、契約の証である藁人形を相手に渡し、人形の首にまかれた紐(赤い糸)を解けば、恨む相手は「速やかに地獄に流される」と告げる。そして、地獄流しの代償について伝えると「後は、あなたが決めることよ」と、囁くように言い、姿を消すのだった。

アニメは、1話完結形式を基本にしながら、第八話から登場するフリー・ジャーナリスト柴田一と、その娘、つぐみが、地獄流しを止めさせようとするプロットが、各エピソードをまたぐように断続。終盤にかけ連続性を強める展開に転じていく。

作中、各エピソードで狂言回し的に登場する、閻魔あいの作品内通称も「地獄少女」。
(作品内では「地獄少女」の名は、「地獄通信」の都市伝説と共に流布。閻魔あいの名を知らない者も、少なくはない)

用語や登場人物

キャラクター

一目連(声優=松風雅也
閻魔あいにつき従う妖怪の1体。しばしば巨大な一つ目の姿を顕す。あるいは、人間の男の姿で、後頭部に大きな一つ目を見せたり、正面の顔が一つ目小僧のように大きな一眼である姿を見せることも。普段あいの身辺などでは、カジュアルなファッションをラフに着る青年の姿をとる。長い前髪を流して、左目は隠している。
  • 藁人形としては、青味がかった色の濃い人形に変化(第二十話)。
閻魔あい(声優=能登麻美子
地獄少女が「閻魔あい」と名乗ることは、作中の噂話でもそれなりに知られてはいる様子。エピソード話数が後に進むほど、直接会う前から、閻魔あいの名を聞き知っている依頼人が増える傾向はある。
外見は、中学生くらいに見える。前髪を揃えた黒い長髪は、日本人形のような印象。他のキャラと比較しても一段と白く色素の薄い肌、顔立ちの内でプロポーションの大きな瞳は虹彩が紅い、などが特徴。口数は少なく、あまり考えを言葉にしない。普通は、感情表現も乏しく、感情の変化をうかがうことはかなり難しい。ただ、第十二話「零れたカケラ達」で依頼人になる少女は、あいの印象を「淋しそうな人でした」と、語る。
あいのことを「お嬢」と呼び、付き従う三妖怪とのやりとりでも、しばしば心ここにあらずといった様子で、頓珍漢な受け答えをすることがある。あるいは、紙風船やビー玉などで、1人遊びを、さほど楽しそうでもない感じで続けていることも。ただ、あいが「おばあちゃん」と呼ぶ謎の老婆は、しばしば、あいの感情を察しているような言葉を口にする。
  • 第1期アニメで、あいは、柴田つぐみとの交感を通じて、終盤、仙太郎の記憶を思い出していく。中盤のあいが、柴田つぐみとの交感を重ねていく様子は、当初しもべの妖怪たちも気づいておらず、あいの言動をいぶかしむようになっていく。
    • 例えば、第十七話「硝子ノ風景」で、骨女は「最近のお嬢はよくわからないよ。正直言ってさ」と、輪入道、一目連に言っている(このやりとりは、あいとつぐみの交感に薄々気づき始める頃のもの)。
    • しもべの三妖怪が、つぐみとあいの交感を確信するのは第二十話「地獄少女 対 地獄少年」でのこと。最初に輪入道が確信を抱き、あいとつぐみに何かの接点があるかもしれない、というところまで推測する。
    • 終盤のあいは、仙太郎の記憶を思い出し、それをきっかけに自分の生前の記憶も思い出す。柴田父娘との因縁を知ると、錯乱。第二十五話「地獄少女」冒頭で、輪入道曰く「憎しみに、心を支配され」ると、地獄通信の勤めと無関係に、父娘に襲いかかる。三妖怪が、口々に、そんなことをすれば、あい自身が地獄に流されると諭すが、あいは「私は、それでも構わない」と言って荒ぶると、「この恨み、地獄に流すがいい」とまで言い放つ。
  • 第二十五話で、柴田父娘が幻視する過去視によれば、安土桃山時代、生前のあいが殺されたのは13歳の頃。数えで7歳の時に、七つ送りの巫女(生け贄)に選らばれたが、その後6年間、仙太郎に援けられて山中の祠で隠れて生きた。

  • CD『地獄少女 オリジナルサウンドトラック』パッケージ。向かって右端が閻魔あい。右から左に、輪入道、一目連、骨女。

  • DVD『地獄少女』4 パッケージ。
おばあちゃん(声優=松島栄利子
閻魔あいが「おばあちゃん」と呼ぶキャラクターは、常に、「夕暮れの里」の閻魔あいの家で、奥の間にいる。常に、障子越しに映る影でしか描かれず、いつも糸車を回している。第二話「魅入られた少女」で初登場。
アニメ解説書籍などで「閻魔あいの祖母」とされることもある。が、作品を観ると、あいとの血縁関係は疑わしい。と言っても、あいとの因縁は“三藁”の妖怪たちほどにも定かではないのだが。
  • 第二十六話「かりぬい」で、「おばあちゃん」は、“あいの家”に軟禁されていた柴田一に、「ここから出してやるよ。その代わり……やってほしいことがあるんだよ」と、語りかける。この時、骨女と共に、一を見張っているよう、おそらくあいに言われていた一目連は、「お嬢にしか、口きいたことなったのに??」と、驚く。
地獄少女
地獄通信にアクセスできた人物の前に姿を現す謎の少女と、都市伝説でも噂されている。通例、やや古めかしい感じのデザインのセーラー服姿で現れる。都市伝説では、地獄少女に会えれば、恨みを晴らしてもらえる、とされているが。
  • 第二十五話のエピソード・タイトルも「地獄少女」。
柴田あゆみ(声優=生天目仁美
つぐみの亡き母で、一の元妻。第1期終盤に、回想で描かれるキャラクター。ただし、「あゆみ」の名前が最初に聞かれるのは一の口から。第十一話「ちぎれた糸」で、柴田家の墓所に墓参りに行く場面。この場面では、一より先に、つぐみが一人で墓参りをしていた様子が、暗示的に描かれる。
  • 旧姓小川。「小川」の文字は、第二十二話「悔恨の雨」で、つぐみが訪れる祖父母の家の表札に見られる。
  • あゆみの死の経緯が一の回想で描かれるのは、第二十二話「悔恨の雨」。
柴田つぐみ(声優=水樹奈々
第1期アニメには、第八話「静寂の交わり」で初登場する小学生女子。母親とは死別していて、父子暮らし。
白昼夢のような幻覚で、閻魔あいの姿を視たり、あいが依頼人との接触している場面などをあい視点で幻視したりするようになる。初登場場面は遮断機が下りた鉄道の踏切を挟んで閻魔あいと対面するつぐみ。
あいが、なぜこのような交信をしてくるか、つぐみにはわからない。第十四話「袋小路の向こう」では、父、一に幻視のことを知らせた時に「どうしてお前にそんなことを教えてくるんだ」と訊かれ、「わかんない」と応えている。(実は、当初あいも、つぐみに「懐かしい感じ」を覚えているだけで、意図的に幻覚を送っていたわけではなかったようだ)
つぐみは、閻魔あいを追う父に、感知する幻覚を告げていき、最終回までなんらかの形で出演。ただ、地獄流しに否定的な父親に「地獄流しはそんなに悪いことなのか?」と、子供らしい疑問を、度々ぶつける。
  • 第1期アニメ終盤、第二十四話「夕暮れの里」の時点(晩秋か?)で7歳。
  • 第二十三話「病棟の光」で、桜の樹の場所(六道郷近在の滝のそば)を幻視するつぐみは、姿を顕す閻魔あいに「私、あなたに」と、何かを言おうとするが、「知ってるの?」「仙太郎を知ってるの?」と訊かれ、“え?”と思う。
柴田一(声優=うえだゆうじ
柴田つぐみの父親。第1期アニメには、第八話「静寂の交わり」で初登場。有名人のスキャンダルをネタにゆすりをするようなダーティーなフリー・ジャーナリスト。娘の前では、良識的なお父さん。元は、硬派の政治雑誌の編集者だったが、商業主義に走る競争から脱落、フリーになった。この間の事情は、第十一話「ちぎれた糸」で描かれる。
初登場時、比較的軽い職業的興味で、地獄通信の都市伝説を取材しようか、考えていたらしい。娘のつぐみが、あいと霊的な交信をするようになり、急速に地獄流しを追うようになっていき、ダーティー・ジャーナリストらしくない正義感を見せ、依頼人たちに地獄流しを止めるよう介入を繰り返す。
“三藁”の妖怪たちには、うるさがられつつ、娘のつぐみと共に、最終回まで出演。
  • 柴田一は、地獄流しへの介入を繰り替えず動機を、「復習は無意味だ」「復讐はするべきでない」と言ったセリフで口にするが。
    • 第十五話「島の女」でまだ藁人形の紐(糸)を引いていない依頼者とその恋人に語るセリフ「糸を引いてしまうと背負いきれない重荷を背負うことになるぞ。いいのか、2人とも幸せになりたいんだろ」は、かなり本心に近い感じだ。
    • 第二十話「地獄少女 対 地獄少年」で、柴田一は、地獄少年こと、ジル・ド・ロンフェールにインタビューする時「復讐は無意味だ」と、地獄少女に伝えてほしいと依頼。ジルに鼻で笑われると「偽善でしょうか」との懸念も漏らす。
  • 柴田一の、ダーティー・ジャーナリストらしくない正義感の背景は、第二十二話「悔恨の雨」から、明される描写が断続的に重ねられる。(第二十話「地獄少女 対 地獄少年」で、一が垣間見せられる幻視も、一が秘めて語らないでいる記憶の断片を暗示したものだった)
人面蜘蛛(声優=柴田秀勝
「夕暮れの里」の閻魔あいの家に巣を張り生息している蜘蛛。第二話「魅入られた少女」のアーバンパートで初登場。背中の文様が3つの目のように見えるが、これが実際にあちこち視線をさ迷わせる目だということがすぐに描かれる。ED(エンディング)画像でも、意味深な構図で描かれている。
  • 人面蜘蛛は、当初「夕暮れの里」の小妖怪のような雰囲気で描かれる。しかし、第二十話「地獄少女 対 地獄少年」では、閻魔あいの家で、輪入道が骨女に、人面蜘蛛のいる場所でうかつな話をしないよう注意をうながすかのような場面がみられる。
  • 第1期アニメの終盤、あいが、柴田父娘との因縁に引き寄せられるように動き出すと、本格的な暴走の前から、あいの行く先にも姿を現すようになる。あいの様子を監視ししていたのだ、と後から察せられる。
  • 第1期アニメの終盤で、人面蜘蛛が、言葉を話せることや、あいより高位の存在の化身だったことが明かされる。
    さらに、“三途の川”の場面で、常に薄暗い闇空に浮かぶ傾いだ十文字のような明かりも、人面蜘蛛の背後の意思の顕現の1つであるらしい。
  • 「人面蜘蛛」は、番組のED(エンディング)などで、声優のキャスト・ロールに見られる呼称。作中、この蜘蛛を特定する名は使われていない。
    ただ、第2期「二籠」の終盤に、輪入道が、人面蜘蛛の背後の意思に「地獄のお偉いさんよ」と、呼びかけるヶ所がある。
仙太郎(声優=豊永利行
第1期アニメでは、あいに関わる幻視や、回想的なシーンに登場する少年。第二十話「地獄少女 対 地獄少年」のエピローグに相当するシーンにて、「夕暮れの里」にいるあいが視る幻視が、最初の描写。
「仙太郎」の名が、作中で最初に聴かれるのは、第二十二話「悔恨の雨」のアーバンパートでのこと。滝の近くに一本の桜の樹が立つ場所の幻視を視るつぐみが、仙太郎の姿も幻視。被さるように、あいのセリフ「仙太郎」を幻聴する。
  • 仙太郎は、生前のあいの従兄弟で幼馴染だった。この関係は、第二十五話「地獄少女」で、柴田父娘が幻視する過去視(?)のような形で描かれる。
    仙太郎は、七つ送りの「巫女」という名目で、生け贄に選ばれたあいを、あいの両親の頼みで庇い、あいが送られた山神の祠に食べ物を届ける。後日、あいが仙太郎らに庇われ、隠れて生きていることを知る村人たちは暴徒と化して、あいを生埋めにする。その時、仙太郎も強いられて、生き埋め作業に手を貸してしまう。
    おそらく、あいが生埋めにされた夜の深夜。村が嫌になった感じの仙太郎は、一人で村を後にする。あいと共に村を逃げることも考えていた仙太郎は、用意してあったのだろう旅支度で山を行くが、途中、村にあがる火の手を見て戻る。そして、蘇ったあいが、村を滅ぼす様子を遠望。狂笑しながら、夜の山道を駆けて逃げ去る。
骨女(声優=本田貴子
閻魔あいにつき従う妖怪の1体。本体は、骸骨の姿らしいが、しばしば、顔の半面や体の一部が白骨化した女性の姿を顕す。普段あいの身辺などでは、遊女風に着崩した和装姿。地獄通信への依頼の背景調査では、アラフォーくらいのビジネスウーマン風の姿を好んでとり、タイト・ミニのスーツなどを着用。オンダ(恩田か?)と名乗る。(骨女が、曽根アンナの名を多用するようになるのは、第2期「二籠」の終盤から)
  • 藁人形としては、赤味がかった色の濃い人形に変化する(第二十話)。
  • 閻魔あいの従者としては、地獄流しの勤めよりも、あい自身の身を案じている感がある。例えば第十三話「煉獄少女」では、地獄流しの依頼に、度々介入を試みてきた柴田一の対処を、どうしたもんかなぁ、と話し合う“三藁”の内で、「いざってときは、あたしたちがあの男を」と最初に口にする。
輪入道(声優=菅生隆之)
閻魔あいにつき従う妖怪の1体。火焔に包まれた木製車輪の中央に、入道の顔面がある。自動車の類に自在に変化できるらしい。地獄少女が、「夕暮れの里」から出陣する際には、牛車に変化すると、あいを乗せ宙を駆けてゆく。輪入道が変化した自動車の類は、いずれかの車輪1つが入道の顔面を持ち、火焔に包まれている。
人間体は、大正時代風の風体で袴姿の和服に山高帽とマフラーを身につけた禿頭の老人。人間体のときは、しばしば、不破龍堂(ふわ・りゅうどう)と名乗る。
藁人形としては、黒味かかった色の濃い人形に変化する。第1期アニメでは、依頼人に手渡される藁人形は、もっぱら輪入道が変化したものだった。
  • 第十話「トモダチ」では、藁人形になっている間(おそらく首に赤い紐が巻かれている間)は、自分の意思で動いたり、妖力の類を使えないような様子が暗示的に描かれている。この件が確定的に語られるのは、第二十話でのこと。
  • 閻魔あいの従者としては、地獄少女としての勤めの遂行を重視している感がある。
    (それも、あいの身を案じてのことであるらしい様子は、2期アニメ「二籠」で色濃く描かれる)
  • 柴田父娘の度重なる地獄流し介入未遂に、あいとつぐみの交感を、三体の妖怪の内でいち早く推測するのは輪入道(第十七話「硝子ノ風景」)。
キャラクター名
解説

用語

「いっぺん、しんでみる?」
閻魔あいが口にする定型セリフの内、視聴者に広く知られたもの。作品外の関連商品で、Tシャツに使われたり、扇子に使われたりした。
このセリフは、地獄流しにされるターゲット・キャラに、閻魔あいが“仕置き”場面のクライマックス(“三途の川”場面に転じる直前)で聞かせるセリフの一部抜粋。
セリフの全体は、次のよう。
「やみにまどいしあわれなかげよ ひとをきずつけおとしめて つみにけがれし ごうのたま いっぺん しんでみる?」
(闇に惑いし哀れな影よ。人を傷つけ貶めて。罪に溺れし業の魂。いっぺん、死んでみる?)
依頼人
第1期アニメでは、地獄通信にアクセスし、閻魔あいに会う依頼人の多くは、実際に会うと「あの噂は本当だったのか」的な反応をみせる例が多い。つまり半信半疑で、通信にアクセスしたタイプだ。傾向としては、地獄少女の名が「閻魔あい」だと予め利いていたこともあるらしい様子の依頼人に、超自然的な出来事を目にしてもたじろがない例が目立つ。例外的に、「地獄通信新」を、殺し屋のようなイメージで、普通の人間が運営していると想定しアクセスを試みる者もいる(第五話「高い塔の女」など)。
“閻魔あいの家”
「夕暮れの里」にある、藁葺き屋根の一軒家。外見は、古びた民家に見える。「周囲に他の家は無い」。
家の近くには彼岸花が群生。少し離れて小川が流れ、あいが、地獄流しに出陣する前などに、長襦袢姿で沐浴する。
契約の証(藁人形)
地獄少女が、依頼人に手渡す藁人形のこと。手渡すと、通例、藁人形が「契約の証」で、ほんとうに恨みを晴らしたければ首に巻かれた赤い紐(作中では「赤い糸」と言われる)を解けばいい、と伝える。「糸を解けば、恨みの相手は、速やかに地獄に流されるわ」。
作中のセリフなどには無いが、手渡された藁人形は、いわば“仮契約の証”とみなすと理解しやすいだろう。
藁人形が、閻魔あいに従者のようにつき従う輪入道の化身であることは、各エピソードを観ていると自然にわかる描写がされていく(骨女や一目連が化身する藁人形が「契約の証」に使われる様子が描かれるのは、第2期「二籠」から)。
  • 第二十話「地獄少女 対 地獄少年」では、藁人業に化身している輪入道のセリフから、赤い紐(糸)が巻かれている間は、普段、自在に使える妖力が使えないらしい様子が窺える。
「契約の刻印」
正式な地獄流しの依頼をして、聞き届けられた人物が、死後に魂が地獄に堕ちることを証す刻印。ターゲットが流された後、体のどこか比較的目立たない部位(多くの場合、胸元)に、小さな刻印が刻まれる。デザイン化された火焔が、太線の円に囲まれ、上部だけが円を押しのけて上方に突き出たような紋様。
「契約の刻印」という言葉は、第二話「魅入られた少女」で、依頼人の少女に対して一目連が使う。
同じ刻印が「地獄送りの刻印」と呼ばれるのは、第十三話「煉獄少女」。物語内の今から50年ほど前、あいに地獄流しを依頼したフクモトが、柴田一に語る。「思えば、私の人生は、この刻印との闘いだった」とも。
  • 閻魔あいが地獄流しのため「夕暮れの里」から出陣する場面で、輪入道が化身した車に、あいを乗せる。この牛車のような車両には、後部に下げられた御簾に刻印と同じ紋が大きく描かれている。前面に下げられた御簾にもやや小さく描かれている。
“三藁”
“三藁(さんわら)”は、閻魔あいにつき従い、地獄流しの準備や遂行を補佐する3体の妖怪の通称。メディア雑誌など、作品外情報で用いられる通称で、作中で使われた例はないはずだ。少なくとも、第1期アニメのセリフなどでは聞かれない。“三藁”は彼らが、地獄流しの契約の証し、藁人形に化身することから呼ばれるようになったはずだが、実は第1期シリーズで描かれたエピソードでは、依頼人に手渡される藁人形は、もっぱら輪入道の化身。骨女や、一目連の化身が依頼人に渡るエピソードは、第2期シリーズ以降。
ただし、第五話「高い塔の女」には、閻魔あいの家で、壁際に据えられた三体の藁人形が、三妖怪の声で会話をするシーンがある。また、第二十話「地獄少女対地獄少年」では、地獄少年ジル・ドゥ・ロンフェールを地獄流しにする依頼を受けたあいは、骨女と一目連が化身した藁人形を携え、輪入道の化身する車に乗る。
アニメ解説記事の類では、3体の藁人形が、それぞれ“黒藁”、“赤藁”、“青藁”と呼ばれる例もあるが、これも作品外の通称であるはず。
  • 第八話「静寂の交わり」では、閻魔あいが、「夕暮れの里」の家で、黒、赤、青3体の藁人形使って遊んでいる場面が観られる。ただしこの場面では、三妖怪のセリフは聞けない。
    第九話「甘い罠」では、あいの家の屋内に遊んだまま放り出されたような藁人形3体の描かれるショットもある。ここでも三妖怪のセリフは聞けない。
  • 第二十話「地獄少女 対 地獄少年」では、依頼人やターゲット・キャラがいるのと同じ空間にいる第三者の普通人には、その場にいるはずの骨音や一目連の姿を認知できない様子が描かれている(この時は、人間に認知できないだけでなく、撮影機器にも写っていなかった)。同じ場面に登場しているあいも同様。
地獄通信
誰かに強い恨みの念を抱いている人物だけが、インターネットで、深夜0時ちょうどにアクセスできるコンテンツ。インターネットに割り込む感じの、超自然的なサイトであるはずで、恨む相手のいない者が好奇心から検索しても、アクセスはおろか、検出すらされない。
地獄通信が、超自然的な通信システムであることは、第十七話「硝子ノ風景」ので、暗示的だが描写される。
依頼したい人物がネットでアクセスできると、通例、まず、モニター画面の中ほどに、小さな人魂のような炎の画像が灯って消える(あるいは、この画像が、現実のネット回線と、超自然的な通信とのゲートのようなものとのアクセスを示しているのかもしれない)。そして、画面は、“あなたの恨み、晴らします”と書かれた下に、恨む相手の氏名を書き込み、送信するためのフレームと送信ボタンとが1つずつ用意された、シンプルな画面になる。
  • 初期のエピソードでは、依頼送信後あまりたたない内に、依頼人の携帯に、地獄少女名義で「受け取りました」とのメールが送付される描写があった。
  • 地獄通信への依頼は、恨みの念が強ければ、相手の個人名を特定できなくても構わないようだ。第二話「魅入られた少女」では、長期間のストーキングに苦しめられた依頼人の記入「〜〜につきまとう人」(おそらく「私に〜」だろう)が受理される。
  • 物語内の今から50年以上も前の昭和25年頃、地獄通信が、新聞の尋ね人欄を使っていたことは、小説『煉獄少女』の作者、ヂゴク・オチローこと、フクモトが、柴田一に語る(第十三話「煉獄少女」)。フクモトは、かつて自分で調査したらしい情報として、地獄少女の伝説が、少なくとも江戸時代まで遡れ、おそらくは、安土桃山の頃まで辿れる、とも柴田に聞かせる。
    (第2期アニメ「二籠」では、安土桃山や江戸時代、地獄流しの依頼システムが「地獄絵馬」だったことが描かれる)
地獄流し
依頼人が藁人形の紐を解くと、人形は宙に飛び立つなどをしながら「恨み、聞き届けたり」という声を虚空に響かせ、去っていく。
たまたま、恨みの相手と対面してる状況で依頼人が藁人形の紐を解くと、相手は依頼人の眼前で忽然と姿を消すこともあるらしい(第十話「トモダチ」、第十五話「島の女」など)。
(ターゲットのキャラが虚空に消えていく直接描写が観られるようになるのは、第2期「二籠」から。第1期アニメでは、むしろ第八話での、軟体の怪物のように変化したガラスの中にターゲット・キャラが引き込まれていく、などの描写が印象に残る)
地獄流しが実行させれる場合、通例、ターゲットのキャラは、まず、どことも知れない場所(地獄のイリュージョン)で、バーチャル・リアリティ体験のようにして三妖怪にいたぶられる“仕置き”を加えられる。そして、仕置きの終盤に閻魔あいが、毎回同じセリフで迫ると、場面は、三途の川を思わせるもやに包まれた川の場面に転換。ターゲット・キャラは、あいが艪を漕ぐ小舟に乗せられたまま、川中にそびえる大鳥居をくぐっていく。この時あいの声で「この恨み、地獄に流します」とモノローグが被さる描写が、定型。
各エピソードの断片的な描写を総合すると「地獄流し」にされた人間は、現実世界では、突然の失踪として扱われる。例えば、後から遺体が発見される、などの描写はみられない。
  • 地獄少女の“仕置き”については、決して一般的な呼び方ではないが、実は、第一話の“仕置き”シーン中に黒田亜矢が、偽の女生徒に「ほんと使えない子ね」「お仕置きしなくちゃ」と言われる場面がある。
  • (地獄流しのターゲットキャラが、三途の川シーンの前に、“仕置き”を受ける空間は、第2期アニメ「二籠」第十六話「悪女志願」にて、骨女の口から「ここは地獄のイリュージョン」と語られる)
七童寺
柴田父娘が六道郷で投宿した宿から、桜の木がそびえる滝に行く途中にある寺院。第二十四話「夕暮れの里」で、七童寺を訪ねる柴田父娘に、住職は、寺の縁起や七つ送りの伝承を語る。
七童寺の伝承では、寺は、山をさ迷う七つ送りの生け贄の魂を鎮めるために建立された、という。寺を建立したのは、黒飴屋の柴田屋の初代で、「今から四〇〇年以上昔」安土桃山の頃に建立。柴田屋の初代が仙太郎。
柴田屋
七童寺に由縁の黒飴屋、現在は、初代の血統の者は、店にはいない、と七童寺の住職。
七つ送り
「かつてこのあたり(六道郷の近在)にあった風習だそうで、山神様に、無病息災、五穀豊穣をお願いするため、七年に一度、七歳になったばかりの娘さんを、山へ捧げていたとか」と、七童寺の住職が語る。
名入りの蝋燭
原則、各エピソードのオーラスの短く定型的な場面では、人名が筆で記された太い蝋燭が多数灯されている暗い空間が描かれる。画面中央手前から奥に、エピソードの依頼人の名が記された蝋燭が移動し、他の蝋燭の間に落ち着く頃、あいの声で「あなたの恨み、晴らします」のセリフが聞こえる。
第十三話「煉獄少女」では、アーバンパート末尾に、闇の空間に無数に浮かぶ名入り蝋燭の灯明が映り、今まさに燃え尽きんとする1本の蝋燭のアップで、エピソードタイトルの画面に転じる。第十三話を観ると、この画面は、名入りの蝋燭が、地獄流しを依頼した依頼者の余命を顕している示唆が読みとれる。
  • (名入り蝋燭の画面が、象徴的なイメージ画像ではなく、作中の異空間で、無数の蝋燭が灯されていることは、第2期アニメの終盤、「二籠」第二十四話「連鎖」)で描かれる)
ナレーション
第1期アニメでは、本編中で普通の意味のナレーションが用いられることは無い。
ただ、毎回番組冒頭OP(オープニング)の直前に、河鍋暁斎の地獄絵(部分)と、閻魔あいや三妖怪の絵を編集構成したイメージ画像に、室井滋による、次のようなナレーションが被せられる。

人の世は縁(えにし)と申します。結んだ糸が絡みつき、脆く哀れな彼岸花。怒り、悲しみ、涙も暮れて、午前零時の帳の向こう、晴らせぬ恨み、晴らします。

「人を呪わば穴二つ」
地獄流しの依頼では、依頼人に代償が課せられる。「人を呪わば穴二つ」。つまり、依頼をした者も、死後に魂が地獄に墜ちることが宿命づけられる。「極楽浄土へは行けず、あなたの魂は、痛みと苦しみを味わいながら、永遠にさ迷うことになるわ」「死んだ後の話だけどね」。
第1期アニメでは、依頼の代償を聞かされた依頼人が直後に地獄の様子を疑似体験する描写や、一瞬地獄のイメージを幻視で垣間見る描写が、前半に偏って観られ、後半にかけて暫減していく。(類似の描写は、2期「二籠」や3期「三鼎」では観られない)
代償の設定から、地獄流しの依頼は1人が1度だけという条件が導かれ、「地獄通信」画面の仕様も合わせて「1人が生涯に1度だけ、対象者1名」ということになる。
(この条件が、地獄少女サイドから明確に描かれるのは、アニメ第2期「二籠」でのこと。特に第2期第十三話「Vの悲劇」)
  • 第十三話「煉獄少女」では、物語内の今から「50年以上前」の昭和25年頃、閻魔あいに地獄流しを依頼したフクモトが死に、あいとともに地獄に向かう様子の描写がみられる。このシーンでは、三途の川を思わせる川を小舟であいとフクモトが行く。地獄流しの場合とは異なり、あいは艪を漕いでおらず、フクモトと対面して座ったままで、小舟は流れに任せてゆっくりと動いていく。
六道郷
安土桃山時代、生前のあいや仙太郎が暮らした山村近在の、現在の地域名。第二十二話「悔恨の雨」で、あいからの幻視を受け取った柴田つぐみが、幻視で視た風景の載っている写真集『日本の桜』を購入。写真集の内に撮影地の地名として「六道郷」の名が見られる。現在は、辺鄙な温泉地。
「むつみ・ごう」と読むらしい(第二十四話「夕暮れの里」)。第二十四話では、柴田父娘は、おそらく仙太郎と、閻魔あいの手がかりを求めて、六道郷の温泉宿に向かう。六道郷に初雪が降る頃のことになる。
  • 柴田つぐみが、六道郷近在の桜の樹のある場所をはじめに幻視する様子が描かれるのは、第十六話「旅芸人の夜」でのことと思われる。
「夕暮れの里」
“閻魔あいの家”がある空間。どことも知れぬ山奥にあるような描写がされるが、作中の人間世界で、深夜0時に送信された地獄流しの依頼メールが、あいのパソコンに届くのも、常に夕暮れ時であることから、異空間にある、と察せられる。閻魔あいが、契約のためしばしば依頼人を引き込む湖の湖畔も、「夕暮れの里」にあると思われる。ただし、あいの家との位置関係は不明。
  • 「夕暮れの里」は、第二十四話のエピソード・タイトルにもなっている。“閻魔あいの家”の周囲には、他の住居も住人も見当らないので「里」と呼ぶのは少し奇妙だが、作品外のアニメ解説雑誌などでは、しばしばこの語が用いられる。
    作中では「地獄少女、閻魔あいの家は、夕暮れにつつまれた場所にある」と、語られるヵ所が、第2期「二籠」の第二十四話「連鎖」にある。柴田一著『真実の地獄少女』を、刑事の飯合誠一が黙読する場面でのこと。「二籠」の「連鎖」では、一旦、あいの家から逃げ出した少女(飯合蛍)が、歩いていると知らぬうちにあいの家に舞い戻ってしまう描写もある。
『煉獄少女』
「煉獄少女」は、第1期アニメ十三話のエピソード・タイトル。作中で、柴田一が知る小説の題名も『煉獄少女』。『煉獄少女』は、昭和25年発行の雑誌「肉と櫻」に掲載された小説で、作者の名義はヂゴク・オチロー。小説に書かれた物語と、地獄通信による地獄流しの類似性に気づく柴田は、『煉獄少女』のことを調べ、小説の作者、挿絵画家だったフクモトのことを知る。柴田に会うフクモトは小説に書いた出来事が、ほとんど自分の体験譚だ、と語る。
用語
解説

関連する用語

「逆さまの蝶」
アニメ『地獄少女』のOP(オープニング曲)。
「かりぬい」
アニメ『地獄少女』のED(エンディング曲)。
  • 作詞=三重野瞳 、作曲=西田マサラ、編曲=西田マサラ、アーティスト=能登麻美子
  • 「かりぬい」歌詞(歌詞タイム)
スタッフ
都市伝説
作中では、地獄通信と地獄少女の話が、しばしば作中人物たちに「都市伝説」と呼ばれている。
「都市伝説」は、本来の意味は「都市化した時代の口伝えの伝承(口承伝説)」。都市環境以外の農村、漁村などを舞台にしても、都市化時代の内容が色濃ければ「都市伝説」に含まれる。この場合の「伝説」は、「真偽の確認はできないが、実際に起きた話として伝えられる物語」のことで、歴史上の過去に起きた(と信じられる)話のことではない。この点、作中で、地獄通信や地獄少女の話が「都市伝説」と呼ばれる用例は、奇異ではない。
例えば、第1話「夕闇の彼方より」で、依頼人になる少女が同じ学校の女学生たちが、地獄通信の噂話をしている様子を偶然聞く場面。この場面では「友達の友達が、実際に地獄通信にアクセスした」といった話が交わされている。こうした語り口は、都市伝説らしい。
アニメの物語内の今で、普通人の間で語られる地獄通信の話は、都市伝説の内でも「ネット伝承(ネットロア、netlore)にあたる。
関連事項

メモ

  • 第1期アニメ『地獄少女』は、シリーズを通観すると、閻魔あいに地獄通信を止めさせようとする柴田父娘が、かえってあいとの因縁を引き寄せてしまう話。結果、視聴者にも、シリーズ終盤で、閻魔あいの素性が明かされる。
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