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2017年4月16日 (日) 04:26時点における最新版
- 作
- ひぐちアサ
『ゆくところ』は、ひぐちアサのマンガ作品。88頁。
1998年に、ひぐちアーサーの名義で、雑誌月刊「アフタヌーン」のアフタヌーン四季賞受賞。
「アフタヌーン」1988年8月号に掲載された。
単行本『家族のそれから』に採録されている。
- 作品構成
- 『ゆくところ』は、片始まり88頁で、2頁めが、純然たるタイトル頁(扉頁)。
- 単行本では、1頁めの小口側枠線外マージンの下部に、「ゆくところ」のタイトルが刷り込まれている。
おそらくは、対向頁が『家族のそれから』の最終頁になっているための措置か(?)。
概略
家庭の事情で学校を休みがちな小泉と、クラスメートで小児麻痺が原因の湊の友人付き合いを描く作品。
同性愛者である小泉は、一方的な告白を湊に繰り返すが、その件については湊ははっきり「ムリだ」といい、相手にしない。にも関わらず、かなり無理のある一人暮らしをしている小泉を湊は放っておけない感じで、友人付き合いを重ねていく。
事件らしい事件は描かれないが、2人の間の理解が、食い違いもありながら深まっていく様子が描かれる物語だろう。
用語や登場人物
- 湊
- 2人登場する主要キャラクターの1人。高校生男子。冒頭の1頁(片起こし)では、湊の家である酒店(湊酒店)の前で、彼が同年輩の男子(クラスメートの小泉)から「お前ンち ここかぁ」と声をかけられるシーンが描かれる。戸惑う感じの湊に、相手は「ナナメ後ろの席の……」と言う。「足どうかしたの?」と、言う小泉に湊は「……これはもとから」と応える。
物語は、彼とクラスメートの小泉との関係を巡って描かれていく。
- 湊が、小児麻痺による障害を右手と左手に持っていることは、物語の少し先で描かれる。小泉は、はじめ湊の障害のことを知らなかった様子。おそらく、あまり登校していないためだろう。
(湊の方も、小泉の家庭の事情のことはあまり知らなかった様子) - 湊は、母親から「直」と呼ばれている。
- 久しぶりに小泉が顔を出した後、再び登校しなかった日、級友たちの「小泉また来ねェなァ」「あいつ 父ちゃん死んじゃったの?」「みたいネ/ずっと入院してたんだって」という会話を、湊が、聞くとも無しに耳に入れてるような描写がある。
おそらく、同じ日の帰宅後、湊は、小泉からの電話を受け、腹が痛くて歩けねぇから病院に連れてって、と頼まれる。
電話で場所を聞いたと思われる、小泉が一人暮らしをするアパートに、湊が行ってみると、小泉は食事を摂らずにいて胃ケイレンをおこしていたらしい。レトルトのおかゆを作ってやる湊だが、後ろから小泉に抱きつかれる。しかし、湊が体勢を崩して倒れこむと、小泉はあわてて謝る。おそらく、この時、小泉が同性愛者だとは知らずにいる湊は、「自分でやれんなら/オレ帰っけど」と帰宅しようとする。
翌日、駅のホームで「みなと」と声をかけてくる小泉は湊に「おれホモでさ/湊くんていーなー……/…とおもっちゃったりなんかして」と、カミングアウトと告りをいっぺんにしてくる。湊の方は「?」と、理解できていない様子。
この後、湊は、親しく接してくる小泉がホモだ、と把握はするが、接し方がわからない様子で、友達のような付き合いを続ける。
- 小泉
- 2人登場する主要キャラクターの1人。高校生の男子で同性愛者。
小泉という苗字と、家庭の事情もあって、めったに学校に登校しない様子は冒頭から9頁めから10頁めに渡って描かれる。(この間、登校してきた小泉と湊との教室でのやりとり描写も、短く挟まれる)
- 小泉が同性愛者であることは、序盤すぐ(冒頭から数えて4頁めから6頁めにかけて)に描かれる。このパートでは、つきあってる年上の男(ヨーちゃん)との、おそらくラブホテルでの様子が描かれ、2人の会話から付き合いだしてさほど立っていないことが察せられる。小泉は「2丁目デビュー」をしてからも間がない様子。(ヨーちゃんは、小泉のことを「フミちゃん」と呼ぶ)
- 小泉が寝込んだアパートに湊が助けに来てくれたおそらく翌日(少なくともさほどたたない日)の朝、通学電車のホームで、湊に声をかける小泉は、「おれホモでさ」とカミングアウトし、湊への恋慕も告げるが、うまく通じない。(この後、小泉は物語のラストまで、あの手この手で再三湊に迫るが、その都度、気持ちは通じない)
- ヨーちゃん
- 小泉がつきあっている年上の男。小泉のことは「フミちゃん」と呼ぶ。
- お姉言葉(女言葉)で話し、小泉が「ヨーちゃんはいくつよ」と訊くと、「女にトシ聞かないの!」と応えている。特に女装をしている場面などは描かれていないが、痩せ型で色白、なよっとしたお姉寄りのホモ・セクシュアルらしい感じで描かれている。
- 作品の半ば頃、小泉が「ノン気の子に入れ込んでるんだってね」と噂で聞いたといい、痴話げんかになる様子が描かれる。
- 裕子
- 小泉の姉。作中、直接外見が描かれることはない。作品後半、小泉が暮らす部屋の電話に入れられた留守録のメッセージが再生される。そして、少し後、小泉が湊に、自分の家庭の事情をぶちまける感じのセリフの内で言及される。
関連事項
- 関連事項
- 解説
メモ
- 作者のコメント
- 単行本『家族のそれから』巻末に収められた「読んでくれた人へ」(あとがきの類)には、次のようなくだりがある。
『ゆくところ』は、投稿作です。
投稿作でしかカッテはできないと考え、スキホーダイやろうと思っていました。よくこれを拾ってくれたものです。
〔中略〕
ところで作中に、
「これ親子のカエルだよ〜〜」
というセリフがありますが、これ、プラスとマイナス、どちらの意味に取りましたか。
身近な人に感想を聞いていて、プラス派とマイナス派が半々なことに気づいたのです。
ワタシのマンガはワタシだけのモノですが、読む人は、その人だけのモノを構築するんだぞ〜〜と実感しました。〔後略〕
- 『ゆくところ』の作品構成
- 『ゆくところ』は、片始まり88頁で、2頁めが、純然たるタイトル頁(扉頁)。
- 1頁め(片起し)=みなと酒店の前
- 2-3頁
- 2頁め=扉(タイトル頁)
- 3頁め=小泉が一人暮らしのアパートから、新宿と思える街並みへ
- 4-5頁=ラブホテルらしい室内で小泉とヨーちゃん
- 6-7頁
- 6頁め=4-5頁の続き
- 7頁め=学校、湊と小泉のクラスの授業風景
- 8-9頁=主に体育の授業風景
- 9頁めの最下段(第3段)は別の日になり朝の出欠風景に
- 10-11頁
- 10頁=休み時間(?)、「小泉また来ねェなあ」という会話と聞いている湊
10頁め下段(3、4段)は、みなと酒店で、帰宅している湊 - 11頁め=主に、湊と小泉の電話で、最下段(4段)で、小泉のアパートに来た港がレトルトおかゆを作ってやってる
- 10頁=休み時間(?)、「小泉また来ねェなあ」という会話と聞いている湊
- 12-13頁=小泉のアパート自室(続き)
13頁めで湊の背後から小泉が抱きつき、2人転倒。 - 14-15頁
- 14頁=湊は小泉の部屋を去ろうとする
- 15頁=14頁の続き(2コマ)と翌朝の駅の場面で構成
- 16頁-17頁=主に、15頁の続き。駅のホームで小泉が湊にカミングアウトと告りを連投。湊は「?」
17頁めの下段(2段組中)は、新宿の情景(おそらく夕景か夜景)。 - 18頁-19頁=ホテルか個室サウナかよくわからない室内の、小泉とヨーちゃん。セックスの後らしい会話。
- 20頁-21頁
- 20頁=1コマめに前の見開きから続くシークエンスでヨーちゃんのアップが入る。続きは、朝の学校で、登校してくる湊と小泉。
- 21頁=「そだ/今日の帰りさ」と小泉が湊に話すコマを1コマめに、時間が飛んで放課後、ゴミ捨て場から粗大ゴミとして出された大形テレビを、小泉のアパートに運んでいく、小泉、湊。湊の部屋に持ち込んでスイッチを入れるとテレビは映る。
- 22頁-23頁=1つ前の見開きから続き、小泉の部屋でテレビを観ていた2人だが小泉が湊を押し倒しキスを奪う。
- 24頁-25頁=小泉に湊が抵抗し、2人は、よくわけのわからない揉みあいに。
- 26頁-27頁=主に1つ前の見開きの続き。いろいろあるけど、湊は小泉に頭突きを入れて部屋を出て行く。27頁の最終コマは、おそらく次の日の昼。
- 28頁-29頁=24頁以降で描かれた、小泉が湊を押し倒した晩のおそらく翌日(27頁最終コマから連続する時制)
- 28頁=上段が、湊の席が空席になっている教室の小泉。そしておそらく、夕刻、自宅の湊の様子に移る。
- 29頁=湊が部屋の引き戸を空けると、母親に通された小泉が立っている。
- 29頁-30頁=小泉の部屋の小泉と湊。
- 31頁-32頁=小泉の部屋の小泉と湊。
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